乳がんステージ4、主婦の日常生活。たまにお茶を添えて。

乳がん→肺転移。オタク体質のお茶好き主婦。基本は寝ています。

「ジョゼと虎と魚たち」がアニメ化

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田辺聖子先生の「ジョゼと虎と魚たち」がアニメになると聞き、

家にある文庫を読み返していました。

小説が発表されたのが1984年(昭和59年)だとか。

 

一度実写映画になっていますね。公開が2003年。

主人公のジョゼは池脇千鶴さん、恒夫は妻夫木聡さん。

確か見た記憶があります。お2人が瑞々しくて色っぽかった。

エロティシズムとフェティシズムを感じさせる内容になっていた、と記憶しています。

 

原作の小説はまた違う味わい。

文庫の表題もこのタイトルですが、これもうタイトルの勝利だなと。

 

田辺さんの作品のタイトルはシンプルなものが多いので、

そのなかでは異彩を放っていると思う。

 

そしてタイトルの持つ意味を、読了後にしみじみと噛みしめる…。

 

物語は、自分をジョゼと名乗る女の子がいて、

身体的にも社会的にも不自由さを持っているんだけど、

自分なりのやり方で生活し恋をする。

 

どの田辺作品にも、息詰まるような女のサガが描かれていますが、

女性賛歌とも言えるような前向きさを感じます。

 

大阪弁もいい。

特に男性の話す柔らかいニュアンスの言葉には、ほだされがち(私が)。

理屈じゃない可愛さを感じます。

 

これだけ多くの作品を生みながら、

田辺聖子という作家が時代に媚びないのは凄い。

令和の現代に読んでもあまり違和感がない。

 

作品に登場する女性達は仕事を持ち、恋愛を楽しむ。

 

普通の事のようだけれど、作品が生まれた時代は、

男女平等や機会均等の少し前で、勿論ネットもない。

女性性に対する見識の高さ、先見性に改めて驚く。

 

あと、この作品を書いた時に作者は50代だったと思うんです。

(私の計算、間違ってないかなと心配になる。)

もう尊敬とか通り越して、なんだか嬉しくなってしまう。

 

田辺先生はたぶん、

性別や年齢や職業や障害と言ったものに、

一切偏見がないのでは。

そして、社会的にまだまだ隔たりがあることも全部わかってて、

しれっと小説に仕立てていく。凄い。

 

この短編集の最期に「雪の降るまで」という作品があるのです。

個人的に短編小説の1つの完成形だと思う。圧倒的。

女って。女と男って。

とんでもないなと唸ってしまう。

 

田辺先生は古典文学にも造詣が深い。

好きという範囲をこえて研究している。

オタクと言ったら怒られるでしょうか。

 

アニメ化をご本人はどう捉えるのか、お聞きしてみたかった。

時代や媒体を越えて表現しようとする若者たちに

エールを送ったのではないかと勝手に推測します。

 

田辺聖子を知らない世代にも、魅力のある小説だと思う。

シンプルな構成と、淡々と積み上げられる言葉の凄み。

密やかさと温かさ。

 のびやかな女性像を是非味わってみてください。

 

そしてアニメを楽しみにしています。

 

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